「つく(創・造・作)る」ことの
現代的意味を考える
読書の生体実験記録

パクリ学入門
ウェブ時代の創造力を鍛える
36冊のブックガイド

なんの苦労もなくコピー&ペーストでさまざまな情報が手に入るウェブ時代、そもそもオリジナルは存在するのか。いま、文芸、音楽、映像、身体などをはじめとする表現=創造力は、どういう状況にあるのか? 
芸術や創造的表現は、もはや我々にとって無用のものになりつつあるのか?
そうしたテーマを、「パクリ」というユニークな切り口で考察したのが『パクリ学入門』です。
36冊の名著から、創造のエネルギーを学ぶためのブックガイド。


パクリ学入門 パクリ学入門
編集部より
なんの苦労もなくコピー&ペーストでさまざまな情報が手に入るウェブ時代、そもそもオリジナルは存在するのか。いま、文芸、音楽、映像、身体などをはじめとする表現=創造力は、どういう状況にあるのか。芸術や創造的表現は、もはや我々にとって無用のものになりつつあるのか。

そうしたテーマを、「パクリ」というユニークな切り口で考察したのが『パクリ学入門』です。では、本書の「序文」の一部を、ご紹介しましょう。

「今やわれわれは、インターネットによって、世界中からテキスト、静止画、動画、音声をかき集めてコピー&ペーストし、図版の入った読み物や映像作品など、さまざまなものを作成できる。かつてないほどスピーディで、仕上がりもきれいなパクリの手段を、コンピュータは標準装備した。創造と情報の転用の差が曖昧になり、パクリが市民権を得てしまったのだ。これが、新たな創造につながるのか、文化をつまらないものにしてしまうか、即断はできない。だが、こういった状態は本当に今に始まったことだろうか。

書道では手本を真似る。絵画の修練として模写がある。表現としてコラージュがある。クラシックでは楽譜のとおりに演奏する。和歌では本歌取りがある。文章を書くことは、すでに存在している単語や慣用句を組み合わせることである。口承文学や民謡が示すように、文化の伝承と創造のあいだに線引きをすることは難しく、ひとつ間違えば文化のダイナミズムを殺すことにもなりかねない。私たちは、いつごろからか、独創というドグマに縛られ、創造は無から有を生み出すものだと考えすぎたのかもしれない。創造を物質やエネルギーや情報が形を変えていく過程と考えると、そこには本質的に「模倣す(パク)る」に近いことがあるはずだ。

そこで私は、「つく(創・造・作)る」ことの現代的意味を考えるために、ある実験をすることにした。文化や創造に関するさまざまな本を読み、その内容をパクリという言葉で強引に解釈してみようというのだ。それによって、独創とは異なる創造の姿が見えてくるのではないか。この、読書の生体実験記録が本書である。
取り上げたのは、創造、文化の発生と伝承、パクリについて考えさせてくれる本ばかりである。
誤解しないでいただきたいのは、本書で取り上げた本の著者が何かをパクっているということでは断じてありません。著者の方々の名誉のため、これは明記しておきます。
みなさん、創造の世界への扉は三十六あります。どこからなりとお入りください。」
もくじ
01 まず原型から疑え
岡本太郎『沖縄文化論―忘れられた日本』
02 食べる人
植草甚一『ワンダー植草・甚一ランド』
03 芸術の土台を発見する
鶴見俊輔『限界芸術論』
04 四季をパクる食卓
水上 勉『土を喰う日々』
05 宇宙をパクる胃袋
三木成夫『内臓のはたらきと子どものこころ』
06 すべては自己パクリから始まった
柳澤桂子『「いのち」とはなにか』
07 千年かけたパクリ?
西岡常一、小川三夫、塩野米松『木のいのち木のこころ〈天・地・人〉』
08 パクリの品格
池波正太郎『鬼平犯科帳』
09 ふるさとパクって
寺山修司『誰か故郷を想はざる』
10 形を食い破る生命
土方 巽『土方巽全集I』
11 言葉をパクり言葉にパクられる
正高信男『子どもはことばをからだで覚える』
12 野蛮人の体力をパクリかえす
野口晴哉『整体入門』
13 下降線の中で輝く生を復権する
三好春樹『元気がでる介護術』
14 パクりたいパクれない
河野美香『男が知りたい女のからだ』
15 関係を食い破る純愛
江國香織『きらきらひかる』
16 時差をパクる
片岡義男『ホームタウン東京』
17 惜しみなく写真機は奪う
安井仲治『安井仲治写真集』
18 言葉の隙間をパクる
稲垣足穂『一千一秒物語』
19 世界に喰われるか喰うかの闘い
草間彌生『無限の網』
20 魂寄せアヴァンギャルド
折口信夫『死者の書・身毒丸』
21 人間はパクる葦である
森谷寛之、杉浦京子、入江 茂、山中康裕『コラージュ療法入門』
22 口承・パクリ・創造
茂木 健『バラッドの世界』
23 意味を殺す
塚原 史『ダダ・シュルレアリスムの時代』
24 音楽からパクられたもの
相倉久人『ロック時代 ゆれる標的』
25 音楽を奪いかえす
野村 誠、片岡祐介『即興演奏ってどうやるの』
26 パクって倒す
椹木野衣『シミュレーショニズム』
27 見えない星をパクる
大平貴之『プラネタリウムを作りました』
28 前提をパクる
木下清一郎『心の起源』
29 パクったつもりがパクられて
天藤 真『大誘拐』
30 わゆるパクリについて
竹山 哲『現代日本文学「盗作疑惑」の研究』
31 夢は荒れ野を
日名子暁『パクリの戦後史』
32 奪われた生
野田正彰『この社会の歪みについて』
33 魅せられたる魂
浜なつ子『死んでもいい』
34 真にパクるとは何もしないこと
福岡正信『[自然農法]わら一本の革命』
35 宗教ー神=?
田川健三『キリスト教思想への招待』
36 もう地球からはパクれない
松井孝典『宇宙人としての生き方』


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