19歳の希里絵を待ちうける、
驚くべき運命とは?
キリエの誕生
19歳の希里絵は、幼いころに母を亡くし、
父親に辱めを受ける。恋も仕事 もうまくいかず、
人間関係に翻弄され、ころげ落ちるように自分を見失っていく。
最悪の人生を目のまえにして、
彼女は人生を投げ捨てようとした。
そんな彼女に手を差し伸べる奇妙な人々。
そんな希里絵を待ちうける驚くべき未来とは?
そして、彼女の出生の秘密とは?
地球の未来を守ろうとする人々を描いた壮大な物語の序章。
エピローグ
ゆるやかな右カーブを抜けると、眼下に日本海が姿をあらわした。
V字谷の中ほどまで海がせりあがり、
その底に町が広がっている。
定規で引いたような一直線の国道を滑るように下っていく。
さっきまで、狭くて曲がりくねった道を走ってきたのが噓のようだ。
1300CC、並列四気筒のエンジンがうなり、
からだを振るわす。
自分がオートバイに乗って故郷に向かっているなんて……。
ビデオの早戻しのように、
二年の歳月を思い返す。
岐阜は元気にしているだろうか。
次郎は幸江と結婚したのだろうか。
小川さんは、佐知子と暮らしているのかな。
あらためて考えてみると、自分の人生とは思えない。
まるで他人の人生を空から眺めているようだ。
これは運命だったのだろうか。
ちがう。
人は、自分を何かにゆだねることなど絶対にできない。
人は、人を救ったり癒したりはできない。
自分で自分を変えていくしかないのだ。
私は、たくさんの人たちの力をもらって生まれ変わった。
世界はきっとやさしさに満ちあふれている。
ただ、それに気づいていないだけなのだ。
キリエ、あなたはよく生き抜いてきた。
これからも、自分をもっと汲み尽くしていくのよ。
それがほかの人たちに勇気と微笑みを伝播していく。
私は静かに微笑んだ。
未来はここにあり、過去もここにあり、
今という瞬間を私はすべて引き受ける。