那覇・栄町、
スイス・ジュラ州ポラントリュイに暮らす人たち。
遠く離れた二つの町を結ぶ、微笑みの共演 栄町—
ポラントリュイ
肖像写真集   
この本の肖像写真を眺めていると、ほのぼのとした幸福感に包まれるのは、なぜだろう?
この写真集は、沖縄とスイスに暮らす「地元のふつうの人たち72人(家族)」のポートレイト写真集だ。
那覇の栄町という南の島。かたや、スイス・ジュラ州ポラントリュイというヨーロッ パ大陸の山間の土地。遠く離れた2つの場所には、共通点らしきものは見当たらない。
だが…。異質な土地に暮らす人たちの「はにかんだ笑顔」を追ううちに、うりふたつの 表情が浮かびあがってくることに気づく。写真という、時間と空間を封じ込めた作品 が描き出す、不思議な力を堪能していただきたい。
栄町-ポラントリュイ 肖像写真集
まえがき〜2つの町の肖像写真
芸術空間とその周りに住む人たちを結ぶため、その町に暮らす人たちを撮影し、展示する。これが、本書の最も単純なコンセプトです。

前島アートセンター(現在、私が理事を務める)は、現代美術による「町おこし」を目的に、2001年、沖縄県那覇市にNPOとして設立されました。私の仲間たちは、地域の人たちとの連携を大切にし、そのために様々な工夫を凝らしてきましたが、当時の前島地域の人たちにとって現代美術は分かりにくく、まだまだ敷居の高いものでした。

そこで、私は、2006年、前島アートセンターと町を結ぶための手段として、町の人たちを前島アートセンターの画廊に招いて、肖像写真展を企画しました。町の人たちがそこに足を運び、被写体となって展示される。ただそれだけのことでした。同センターは、わけあって栄町に移転しましたが、2007年、私はそこでも同様の肖像写真展を企画しました。

美術家であり写真家である私にとって、この企画は、私がふだん志している芸術活動とはまったく違うものでしたが、回を重ねるごとに、今までとは違う感覚が私を魅了するようになってきました。
これが思いのほか面白かったので、2008年、友人のダニエル・ロペス君とミッシェル・アンジ君に誘われて、同じことをスイスのポラントリュイで行ってみました。

私を驚かせたのが、スイスの人たちは私が思っていた以上に恥ずかしがりやで、沖縄の人たちとあまり変わらないということでした。また、図々しく無理なポーズをお願いする私に、みなさん快く応じてくれたことも同じでした。海に囲まれた小さな島の人たちと、山に囲まれた大陸内部の人たちに、このような共通点があったのです。

写真の撮影と選択には、私の独断的な美意識が働いています。私は被写体の要望をあまり聞かない代わりに、その人にきっと喜んでもらえるように最善の注意を払って、時間内でできるかぎりその人が、美しく、魅力的で、可愛らしく見える角度を探しつづけます。

撮影に参加していただいた日本とスイスの方々、サポートしていただいた両国のギャラリーの関係者の皆様に、深く感謝いたします。

2010年10月1日 仲本 賢


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