『たのしい編集』が発売になってはや一ヶ月。ようやく献本作業を終え、一息ついています。
ところで、「献本は何のために、どのくらい、どんなところにするんですか?」という質問をいただきました。あまり深く考えてみたことがなかったので、ちょっとびっくりしました。
まず、「献本」とはなにか。明鏡国語辞典で調べてみると
けん‐ぽん【献本】〘名・自他サ変〙
書物を進呈すること。また、その書物。
とありました。確かにその通りなんですけど、ずいぶんとざっくりしているので、もう少し掘り下げて考えてみることに。
何のために献本するのか
献本は、出版社にとっては、書籍の販売促進のツールのひとつです。「こんな本を出版しました〈ご案内〉。もし気に入ってくれたら、紹介してくれませんか!?〈お願い〉」という気持ちを込めて贈っています。ひらたく、いやらしく言えば、「無料で本をさしあげるので、広告塔になってください」ともいえるのですが……。
たとえば、本を贈られた人が、書評を書いて媒体で紹介してくれたとします。それを偶然目にした読者には、本の存在を示すアピールにもなるし、有名な書評欄に掲載されると、書店さんも「これは影響がでそうだな」と注文数を増やしてくれるかもしれません。そうなれば、献本は成功したと言えるでしょう。
そしてもうひとつ。恩師や同業者、友人などへ差し上げる献本があります。これは宣伝が目的というよりも、「自分のつくった(書いた)本を読んでもらいたい」という純粋な願いからの献本です。
今回は、前者に絞って、話を続けていきます。
誰に献本するのか
新聞社、雑誌社、書評家、有識者、最近ではアルファ・ブロガーやウェブニュースサイトの編集部にも献本しています。ただ最近は、SNSなどが活発に利用されている時代なので、どこから口コミが広がるかはわからない、というのが実感なので、誰に献本をするのかを考えるのは、けっこう頭を悩ます問題です。
どうやって献本するのか
大きく分けると、郵送、手渡し、Amazon等のネット書店からの発送などの方法があります。近々会う予定のある人には手渡しで献本し、関係者(ごくごく近しい人)にはAmazonから発送したりもします。もちろん、その際はあらかじめメール等でお知らせをしておきましょう。「買った覚えのないモノが届く」ことほど気持ちの悪いことはありません。そして最もポピュラーなのが、郵送で送る手段です。
①献本レターをつくる
必ず同封するのは、ご挨拶も兼ねた、ご案内状です。ポイントは、本の売りを、簡潔にまとめて書くことです。献本された人は、多忙で本を読む暇などないかもしれません。なので、その人が掲載媒体にそのまま「コピペ」してもよいような文章を書くように、心がけています。
もちろん、手書きのほうが効果があるかもしれませんが、私の場合はペン字に自信がないので、この献本レターに加えて一筆を添えるなどの対応をしています。ただし、ゆうメールなど、「信書(手紙。書状。特定の個人にあてた通信文を記載した文書)」や「印刷されていないもの(手書きのもの)」を同封できないものもあるので、注意が必要です。
なお、特に献本レターなどは同封せず、「謹呈」と書いた短冊(しおりのようなもの)を挟む、シンプルな献本もあるようです。
②ラベルをつくる
送り先を印刷したラベルをつくります。エクセルで住所録をまとめて、ワードの差し込み印刷機能を使うのが、手っ取り早いかもしれません。間違えがないように、なんども確認しましょう。
③梱包する
唯一の重労働です。本が傷まないように、ダンボールでつくられた書籍用の梱包紙材や、緩衝材のはいった袋などで梱包して送ります。
箱には、「献本在中」と書いておきます。突然贈られてきた人はびっくりしてしまうでしょうから。
献本数が多い場合は、猫の手も借りましょう。あっという間に終わるし、作業が終わったときは何ともいえない達成感を共有できます。
④発送する
梱包した献本の大きさと重量をはかって、運送業者を選びます。数冊ならいいのですが、何十冊の献本となると、費用もバカになりません。
何冊くらい献本するのか
一概に「●冊!」とは言えません。『たのしい編集』は50冊ほど献本しましたが、出版社の方針にもよるでしょう。では、数打ちゃ当たる理論は当てはまるのだろうか……。
某古本屋で献本レターがはいったままの新刊を見つけたときは、愕然としました。興味のない書籍を勝手に送りつけた出版社側にも非はあるのでしょうが、もし献本されたら、せめて案内状は抜いて、売ってくださいね。あれ、けっこう凹むんですよ(笑)。
こんな経験もあるので、やっぱり適切な人に送ることが重要だと思うようになりました。
あらかじめ献本にかける販促予算を決めておいて、本の原価+発送費などで冊数を割り出す手もありますね。
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ということで、今日は献本の話でした。もちろん、献本をしたからといって、必ずしも本が売れるとはかぎりません。本のジャンルや内容にもよるし、献本された人が「面白くなかった」と感じれば、もうアウトです。とはいえ、ひとりでも多くの人に、本を知ってもらいたい、読んでもらいたいという思いで、今日も献本に汗を流すのです。
うえださん、答えになっていますか!?