2月 222013
2013年2月22日
二十四節気では雨水の季節にはいりました。『まるごと日本の季節』には「雪が雨に変わり、氷が溶け始めるころ」とあるので、一気に春めいてくるのかとおもいきや、数日前には雪がちらついたりと、まだまだ寒さがつづきそうです。しかも今週末は、今シーズン最強寒波が到来するんだそう。こんな日は特大マグカップにたっぷりコーヒーを淹れて、読書するのがいちばん。ということで、年末に翻訳者の下村純子さんにいただいた『フランス白粉の秘密』を手に取りました。以前ご紹介したエラリー・クイーンの国名シリーズ第二弾です。第一弾の『ローマ帽子の秘密』は劇場が舞台でしたが、今回はNYの百貨店で事件が発生します。
ミステリーなので・・・・・・やっぱりネタバレ厳禁ですよね。このシリーズはぜったいにTVドラマ向きだと思うんだけどなぁ。これを読んだプロデューサーさんっ、ぜひご一考を! エラリーは玉木宏さんとかどうでしょ。
次セリフは、書店で至福の時を過ごしていたエラリーが、父のクイーン警視に事件現場に呼びだされて登場する、冒頭のシーンです。クイーンはエラリーの肩を叩きながら、忙しいところ悪かったとねぎらいますが、それに対してエラリーは、
- ぼくのほうは、おせじをおかえしするどこじゃありませんよ。あなたのおかげで、ぼくは愛読者の無上の天国からひきずりおろされたんですからね。(井上勇訳『ローマ帽子の謎』)
- お父さんに、色よい返事はできませんよ。あなたはぼくを愛読者の天国からおびき出したんですからね。(石川年訳『ローマ劇場毒殺事件』)
- 迷惑しなかったといえば、噓になります。おかげでぼくは、愛読者の天国を見捨てて来ました。(宇野利泰訳『ローマ帽子の秘密』)
- ぼくの方は、素直に同じ言葉を返せませんよ。愛読家の至上の天国から引きずりおろされたんですから。(中村有希訳『ローマ帽子の謎』)
- こっちはお愛想を返す気になれないね。愛読家の至上の天国から急に引きずり出されたんだから。(越前敏弥・青木創訳『ローマ帽子の秘密』)
1、2、3は、どちらかと言えば、昔ながらの家父長制度の父子関係。4、5に関しては、もう少し近しい間柄を感じさせます。
とはいえ、エラリーは、父親に金を借りて本を買おうとしていたわけだから、どちらかといえば、どら息子な臭いがするのはわたしだけ? 当時はきっと本はそこそこ高価なものだったろうから、現代だったら、「父さん、ポルシェがほしいんだけど、ちょっと金貸してくんないかな?」みたいなイメージかしら。
言葉の使い方ひとつで一冊の本の世界観が決まってしまう。翻訳とは奧が深いものだなぁと改めて思ったわけで。装幀を並べてみてるとより雰囲気が伝わるかもしれない。
さて、こんな寒い日に編集長は何をしてるかと言えば・・・
後ろからはガスヒーター、下からは電気カーペットのダブル・ウォーミング体制で原稿待ちです。本日、訳者の初校赤字ゲラが戻ってきました。さて、仕事ですよ!
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広報部長φ(ふぁい)
広報部長 : ガイア・オペレーションズ
2012年、福島県浪江町生まれ。ヘッドハンティングされ、2013年5月より、「美しい空と海と大地を楽しむ」暮らしを考える出版社、ガイア・オペレーションズに入社。現在、広報部長を務めながら、人間の暮らしを勉強中。
http://phi-cat.tumblr.com/
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